診療
病理医の仕事
病理診断とカンファレンス
病理診断は、人から採取された病変の標本から病状について判断を下すものです。肉眼的観察と顕微鏡による組織学的観察より得られた所見を総合して行われるのが通例です。病理診断は種々の検査の中でも確定度が高く、診断学的には一般に最終診断 final diagnosis(確定診断)として扱われます。
各病理医が診断案を作成し、毎日の診断チェック会(カンファレンス)を含むダブルチェック体制で報告を行っています。
診断報告を終えた後の症例については、他の診療科(皮膚科、消化器外科、呼吸器外科、整形外科など)とも定期的なカンファレンスを行い、病理と臨床の総合的な視野で医療に貢献しています。
切り出し
手術や病理解剖で得られた一定以上の大きさの組織や臓器では、ホルマリン固定後の検体から必要な部分を選択し、標本作製に適切な大きさ・形になるように組織を採取します。この作業を「切り出し」といいます。
切り出しは、提出検体における病変の存在部位・拡がり・大きさ・性状の他、副所見の有無など、肉眼的観察を充分に行いながら、必要な部分を選択して切り出します。
残検体は追加の切り出し検索等の場合に備えて、切り出し後も一定期間、適切に保管します。病理診断が終了し、一定期間を経た後は、適切な行程を経て荼毘に付します。
病理解剖とCPC(臨床病理症例検討会)
病理解剖は遺族の承諾を得て、病理医により実施される病死者の解剖です。執刀者は、原則として厚生労働省認定の死体解剖資格を有する病理医です。病理解剖における遺族の承諾の必要性や解剖を行う場所、標本の保存、御遺体を取り扱う上で礼意を失わないように注意すべきことなどについては、死体解剖保存法で規定されています。
病理解剖の意義は、まず亡くなられた方の死因の解明が挙げられます。当教室の病理解剖では、主治医(患者の臨床経過を熟知している臨床医)1名以上の立ち合いを必須としており、生前の臨床経過を踏まえながら病理解剖で肉眼的観察を行い、組織・臓器の採取を行っていきます。その後、検体の切り出しと標本作製を経て、顕微鏡学的な検索を行います。
病理解剖の所見がある程度まとまると、病理医と主治医(臨床科)との間で、臨床解剖症例検討会(Clinico-pathological conference: CPC)を行います。病理解剖学的所見を踏まえたうえで、主治医は患者の身に起きていたことを総合的に考えることとなります。CPCの討議の結果を踏まえて、病理医は病理解剖診断書(病理解剖報告書)を作成し、報告します。病理解剖診断の結果を踏まえて、御遺族への結果報告・説明は主治医(臨床科)から行います。
病理解剖の意義には死因の究明や治療効果の判定の他にも、臨床診断との対比(病変の質的・量的確認)を行うことで医療の質の向上へ寄与し、個人情報を匿名化した上で医学生・研修医が学ぶ教育の機会ともなります。
当教室では、鹿児島大学病院で亡くなられた方々および県内の他医療施設からの持ち込みで年間約30件程度の病理解剖を行っています。
・鹿児島大学病院の医師で病理解剖を依頼されたい方は、院内電子カルテの病理マニュアルをご確認ください。
・鹿児島県内の他の医療施設の医師で、患者さまの病理解剖を依頼されたい方は、鹿児島大学病院病理部・病理診断科のページをご確認ください。
がんゲノム医療
2019年より「がんゲノム検査」が保険承認され、国は、がんゲノム検査と診断が独自に可能な施設として、全国11カ所の中核病院と34カ所の拠点病院を指定しました。
鹿児島大学病院は拠点病院として指定されており、がんゲノム検査の実施、結果解釈と診断、データに基づく薬物療法を行うことが承認されています。
当教室は鹿児島大学病院がんゲノム医療部門と協力してがんゲノム医療に携わり、毎週エキスパートパネルを開催しています。